強相関理論研究グループ

主宰者

主宰者名 永長 直人 Naoto Nagaosa
学位 理学博士
役職 グループディレクター
略歴
1983東京大学物性研究所 助手
1986東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻 博士学位取得
1998同 教授(現職)
2001産業技術総合研究所 強相関電子技術研究センター 強相関理論チーム チーム長
2007理化学研究所 交差相関理論研究チーム  チームリーダー
2010同 強相関理論研究チーム チームリーダー
2013同 創発物性科学研究センター 副センター長(現職)
2013同 強相関物理部門 部門長
2013同 強相関物理部門 強相関理論研究グループ グループディレクター(現職)

研究室概要

固体における電子状態を、そのトポロジカルな性質に着目して理論的に研究し、非散逸性カレントを含む新奇電子機能の開拓を行う。第一原理電子状態計算と、場の理論を用いた解析的手法、数値計算によるモデル解析を組み合わせることで、強相関電子の示す磁気特性、光学特性、伝導特性、熱特性、などをその内部自由度(スピンや軌道)に着目して予言・設計する。特にこれらの諸物性の間の非自明な相関―交差相関―に焦点を当て、相対論的スピン軌道相互作用やスピンテクスチャーがもたらすトポロジーを考慮することで、電子分裂、非散逸性などの新しい概念の構築を目指す。

研究分野

物理学、工学、材料科学

キーワード

創発電磁気学
電気磁気効果
シフトカレント
非相反効果
スピンホール効果
界面電子
超伝導

研究紹介

反転対称性を持たない物質におけるシフトカレントの理論

反転対称性を持たない物質に光を照射すると、外部電界なしに直流の光電流が流れることが知られている。この現象―シフトカレントーは固体中電子のベリー位相という幾何学的構造によって駆動される「トポロジカルカレント」の一種である。我々は、この固体中には不純物散乱や電子格子相互作用による電子緩和の効果や、外部電界下での光キャリアの加速、光電流のノイズ、などシフトカレントの物理的性質を理論的に研究した。その結果、緩和の効果は光強度依存性に現れ、光強度が小さい時にはシフトカレントは緩和に依存しないこと、しかし電界下でのI-V特性は緩和依存性が大きく、易動度が小さいほどエネルギー変換効率が大きくなるという、従来の光電流とは正反対の振る舞いを見出した。また、光電流のノイズは、バンド幅が小さい時に小さくなることを明らかにした。さらに、第一原理計算によって強誘電半導体SbSIのシフトカレントを計算し、実験とその励起エネルギー依存性も含めて定量的な一致を得た。

強誘電半導体SbSIのシフトカレント。左図:SbSIの結晶構造。中:テラヘルツ光強度の時間依存性。右:シフトカレントの入射光エネルギー依存性と理論計算との比較。定量的な一致が得られている。
M. Sotome, et al., “Spectral dynamics of shift current in ferroelectric semiconductor SbSI” Proceedings of National Academy of Sciences of the United States of America 116, 1929-1933 (2019)

 

不純物系におけるskyrmionのダイナミクス

らせん磁気構造や磁壁そして磁気渦と異なる、トポロジカルな磁気粒子skyrmionは、様々の特性をもつ。極めて小さな電流により駆動できる運動特性はその典型である。一方で、多結晶材料などにおいて不純物効果が強くなれば、skyrmionはまた、多様な運動形態を示す。我々はLandau-Lifshitz-Gilbert方程式を用いた数値シミュレーション法により、不純物効果の強い系における電流駆動skyrmionのダイナミクスを調べた。そして次のようなskyrmion集団の動的振る舞いを見出した: 印可電流の増加とともに、(A) ピン止め状態、 (B) ピン止めが外れた状態、 (C) skyrmion の増殖/消滅現象、そして (D) skyrmionの凝集現象が出現する。これらのうち (C) の増殖現象は、強く歪んだskyrmionの分裂に起因する。また (D) の凝集現象は不純物に散乱されるskyrmionが放つスピン波が、skyrmion間の引力を媒介することによる。また、レプリカ場の理論を用いた解析的手法で、スキルミオングラス状態を記述する理論を構築し、ピン止め周波数、ドメインサイズ、非相反スピン集団励起モード、光学応答、磁気共鳴、などの物性に対する予言を行い、ヘリカル相との顕著な相違を明らかにした。

電流駆動skyrmion増殖の素過程
強い不純物効果により、電流駆動skyrmionは歪み、分裂する。
W. Koshibae and N. Nagaosa, Scientific Reports 8, 6328 (2018).

メンバー一覧

永長 直人 Naoto Nagaosa

グループディレクター nagaosa[at]riken.jp R

Andrey Mishchenko

上級研究員

小椎八重 航 Wataru Koshibae

上級研究員

Jun He

特別研究員

関根 聡彦 Akihiko Sekine

基礎科学特別研究員

紅林 大地 Daichi Kurebayashi

基礎科学特別研究員

研究紹介記事